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第三章
冬彦は社会人になって一人暮らしを始め、すでに友の会が何をしているかということも理解している。
ひたすら徳を積み、愚かな人間に制裁を下す組織だ。嫌なうわさも耳にしたが、冬彦は組織を非難する人間の単なる陰口と一蹴した。
ある夏、彼は同世代の美しい女性、吉田こよりと恋に落ちた。偶然だったが彼女は友の会関東代表の娘だった。
こよりの父親、寛治は冬彦をいたく気に入り、若い二人はスピード婚約した。しかし、こよりは婚約直後から態度が変わり、愚痴を言うようになった。
「本当にお父さんたら馬鹿なんだ。家ではぱんつ一丁で散らかしてばかり。嫌んなっちゃう。それなのにえばってばかり。ああいうの馬鹿っていうんだよね」
「こよりさん、お父さん頑張ってるんだよ」
「冬彦さんたらお父さんのことかばってばかり! 私の気持ちを受け止めてよ!」
冬彦は寛治の悪口を言える立場ではなかった。そうだね、お父さん馬鹿だね、とは言えないのだ。こよりの愚痴はどんどんエスカレートした。
「お父さんが駄目っていうの。頭悪くて作文0点だった馬鹿だよ。ひどいと思うでしょ?」
「こよりさん、お父さんに優しくしよう」
「どうしていつも私を否定するの!」
ある日冬彦はこよりに切り出した。
「君のカウンセラーやるの、疲れたよ。もう愚痴は聞きたくない」
「なんですって」
こよりはすぐさま事の顛末を父親に告げ口した。
「私、愚痴なんか一言も言ってません!」
冬彦は寛治から報復を受けることになる。その瞬間、家族、親族から絶縁された。
友の会は日本の法律で機能はしていない。内部に独特のルールがあり、裏切者に人権はなかった。
冬彦は婚約を破棄され、代わりに鞭打ち百回の刑を言い渡された。生爪もはがされた。冬彦は全てを失い、再び歩けるようになるまで一年かかることになった。
(続く)
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