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「借りときなよ。ここに返してくれればいいから」
仕方なく、美代も言った。
店の前で傘を広げた響を見ていると、傘の先のキャップが一箇所外れて、少し壊れているのが見えた。
それを見た美代は航を睨んで、航は顔を赤らめた。
しかし響は壊れた傘にも全く動揺せず、それを差して逞しく雨の中を歩いて行った。
それから、夕立が降り出しそうになると、航はカフェ「Blue」に行き、しばらくすると、待ち合わせたかのように雨の中を響がやって来て、航のバカな世間話を聞いて、コロコロと笑っている。
すっかり響はカフェ「Blue」の常連となり、カウンターで航の隣に座った。
そんな時間が響の寂しさを癒しただろうか。
響はずっと明け透けに笑うようになり、航は美しい響に求められて、日常が充実した。
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