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わたし
気づけば瞳はあなたを映しだしているのです。意識はなく、ただ呼吸や心臓の鼓動と同じように、わたしの意識外の行動として体に刻まれているのです。あなたはわたしを愛しているのです。
ぽた
わたしは縫い付けられた様に動けません。固定されているのです。あなたを見離すまいと必死なのです。この目にこの脳にこの心臓にあなたの印を刻もうと必死なのです。
あなたのやわらかい栗毛はゆらりゆらり、可憐でほのかなキンモクセイの香がいたしました。
ぽた
わたしはその香に誘惑されました。あなたはこちらを向き、憂いを被った表情でなにか訴えているようでした。ですが、わたしにはわかりません。
肌寒く、じわりと色づく頬とささやかに震える指先があったのです。飾り気のない指がわたしの方へ方へと伸びてくるのです。
ぽた
その指先が、あなたの神経が、あなたの細胞が、あなたそのものが、わたしに触れそうになりました。
その刹那、わたしは
!
わたしとあなたは秋に出会い、冬に終わったのだ。
せいぜい二、三ヶ月の間、あなたは私に全てをくれた。あなたと出会い、私は幸せだった。
惑わされ、翻弄され、泣き喚き、心臓が破裂する様な日々。こんな日々でも幸せだった。
永遠を願った。この日々に永遠を、と。だが、叶わない。ならばもうひとつだけ
わたしはあなたなのです。
あなたはわたしなのです。
わかりませんか
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