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「だめです、春子さん!」
虎将の顔が苦痛に歪み、春子を見た。
「……はやく行け!」
目には涙が滲んでいく。好きな人が血を流しているのに、放っておけるわけがない。
「いやです、虎将さ」
「陽太っ! はやくしろ!!」
虎将は苦しそうに、切羽詰まった声を上げる。
「は、はい!」
「春子さん、はやくこっちへ!」
春子は陽太に引きずられるように車の中に押し込まれる。
はやく逃げなければいけないのはわかっている。一刻もはやく立ち去らなければ虎将たちの邪魔にもなる。頭ではわかっていても、心と身体が言うことを聞かない。虎将から離れたくないと叫んでいる。
「虎将さん、虎将さん……っ!」
陽太は素早く運転席に乗り、車を発進させる。
春子は泣きながら何度も虎将の名前を呟いていた。
もう二度と彼と会えないかもしれないのだ。
涙がとまらなかった。
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