2387人が本棚に入れています
本棚に追加
27.落ち着かない時間
「……ぅ」
陽太に連れられ、春子たちは吾妻組事務所にいた。
ここなら安全だと、吾妻組の組員も周囲を囲っている。ここまで連れてきてくれた陽太は、倉庫へ戻っていった。
到着してからずっと春子は足を抱えて泣いていた。こうしている間にも虎将がどうなっているかわからない。本当なら今すぐ会いに戻りたいところだが、そんなことをしても足手まといになるだけだ。
弱い春子にはどうすることもできない。それがもどかしくて仕方がなかった。
一緒に戻ってきた琴はソファで眠っていたが、しばらくして目を覚ました。
「……ん? ここどこ……?」
「琴さん! 大丈夫ですか!」
「ん……あ、春子さん?」
琴はゆっくり起き上がるが、びくっと身体を震わせた。
「いたーい!!」
「ど、どこをケガしてるんですか!」
琴は自分の身体を隅々までチェックする。あの人たちのことだ。何をしているかわからない。
「最悪跡ついてんじゃん……あのチビじいさん許さないんだからね!」
「チビってもしかして……」
「客のオッサン! めずらしくアフターしたいとか言うからついてったら眠らされてさあ……」
やっぱり、春子の義父のことだろう。
最初のコメントを投稿しよう!