28. 頭に浮かぶのは

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 貫禄のあるその姿。けれど今はその影もない。今までは組員に任せていたが、とうとう一人になってしまったらしい。  勝ちだ。  虎将はそう思ったのに、最後の最後で油断した。だが、もう負ける気はしなかった。 「……撃つなら撃てよ。撃ったところで、あんたは若頭にはなれない」 「なんだと?」  相原の眉がぴくりと動く。 「駒にされた組員たちは今後もあんたについて行くか? 金さえ積めばなんとでもなると思ってるか? 格下の俺を殺して、英雄になれるとでも? そんなの、会長を甘く見すぎだ」  こういう姑息なことをする男を、若頭にするような会長ではないことを知っている。もし撃たれたとしても、あとは会長がなんとかしてくれるだろう。 「小僧の分際で舐めやがってぇ……!」  相原が銃のスライドを引く。それでも虎将は相原の目を鋭い目で見つめ続けた。  撃たれる覚悟はできていた。  でも一瞬、春子の悲し気な顔が浮かぶ。  彼女と生きるためにも、ここで撃たれるわけにはいかない。その思いが虎将の心を動かした。自分の命と引き換えに相原を落とすしかない。そう思っていた気持ちが消え去った。執着のなかった『若頭』に対する思いも変わる。 「う、うおおおおおおお!」  相原の怒号が響くと同時に、発砲音が数回、響き渡った。 「虎将っ!」  しばらくして静まり返った
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