進藤くんちの事情《Side K》

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進藤くんちの事情《Side K》

雅貴(まさき)くんは、思っていたよりも。 「えっと……どうかした?」 「何が、ですか?」 うわ、真顔で()き返された。 もしや彼にとってこれは、通常運転なの? ぴったりと寄り添われた身体と、スマホを置いたとたん絡めとられる指先───雅貴くんは『甘えたなネコ彼』だった。 一瞬、どうしたものかと考えたけれど。 「ううん、なんでもない」 「そうですか」 微笑みを浮かべた雅貴くんが私の肩にもたれて、その愛しすぎる重みがかけられる。 ……別に、彼の体温も匂いも不快じゃないし。むしろ、なんかいい匂いがするし。 え? 何つけたら、こんないい匂いすんの? 「このあと、ウチ来る?」 と、晩御飯&お家デートのつもりのお誘いをした今日。 久しぶりに重なったシフトは、初めて雅貴くんのアパートに泊まった翌日以来だった。 まつ毛長いな〜、いい匂いするな〜、と。 食後のまったり時間をイケメン(彼氏になってくれた奇跡にバンザイ)な雅貴くんの横顔を見て過ごす幸せ。 神様、ありがとう。今度、何か御供えします。 なんて、阿呆なことを思っていたら。 文庫本に目を落としていた雅貴くんが、私の視線に気づいたように、ふっと笑い、こちらを見た。 「……叶絵(かなえ)さん。今度、オレの両親と会ってもらってもいいですか?」 「いいよー。……って、え? ご、ご両親!?」 「はい。都合が良い日、教えてもらえれば」
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