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進藤くんちのウラ事情《Side M》
「ちょっ……大地?」
「なに? まいさん」
「そろそろ雅貴が帰って───だからっ」
「……えー? 彼はきちんとインターホン押してくれるよ? だから、ね……?」
───失敗した。
久しぶりの実家すぎて『コレ』があるのをすっかり忘れてた。
『明日の夜、帰るから』
だけでなく、時間まできっちりメッセージに入れとくべきだったと思ったけど、後の祭りだ。
大きな溜息をついてから、リビングに入る手前の壁をドンドンと乱暴に叩く。それから、リビングに入れば、ソファーの上で乳繰り合う中年バカップルがいた。
見慣れた光景とはいえ、多少は気まずい。そういう意味でも、オレが一人暮らし始めたのは致し方ないと思う。
「お帰り、雅貴」
「……っ、ちょっ、だから退いて! ごめん、雅貴……えっと、は、早かったね……」
にっこりとオレに向かって笑う父さんと、そんな父さんを突き飛ばしながらあせる母さん。……あきれるほど、いつも通りだ。
「……こういうの、困るんだけど」
「そっ、そうよね! ごめん、アンタにはいつも嫌な思いさせて……」
「オレは慣れてるからいいけど、オレの大事な人の気分損ねたくないから、人前では自重してよ。
特に父さん」
「……あ、僕への苦言だったの? 雅貴も大人になったんだねー、って! まいさん、聞いた!?」
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