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乱れた髪を整える体で母さんに触れながら、オレの言葉を笑って聞き流しかけていた父さんは、そこで母さんの肩を揺さぶった。
「ちょっと、雅貴。アンタ、いま……」
母さんは、父さんの手を軽く払いのけると、あっけにとられたようにオレを見る。
「うん、大事な人。今度ウチに連れて来ようと思って」
「お、女のコ? あ、男の子でもいまは別にね……」
「は? 生物学的には女性だよ。……って、なんかこの言い方は、逆に叶絵さんに失礼だなぁ……」
オレの性的指向を変に勘ぐっていたらしい母さんの確認に、ムッと眉を寄せる。
まぁ、いちゃつき体質を抜かせば、オレの両親は至って気遣いができる人達だから、下手なことは言わないだろうけど。
「だって、アンタが彼女を家に連れて来るとか、初めてじゃない? そもそも、付き合ってる人とかのこともあんまり聞かないし」
「───叶絵さんて、いうんだね。写真とかある?」
「ん、あるよ」
実は母さんには言わないだけで、父さんにはオレの恋愛?遍歴は話したことはある。
そのせいか、細かい突っ込みのない父さんに、先に画面上の叶絵さんを紹介する。
「本郷叶絵さん。『シャル・エト』のパティシエール」
「へぇ、可愛いらしい人だね」
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