19人が本棚に入れています
本棚に追加
───そうしてオレは、いつの間にか、叶絵さんに「ありがとう」と、微笑まれるのを心待ちにしてる自分に気づいた。
ただ、叶絵さんの笑顔が、見たかった。
叶絵さんに彼氏がいるって知ってからも、それは変わらなかった。
というか、どんな彼氏か知らないけど、早く別れればいいのに……なんて、自分の内側にどす黒い感情があるのも知った。
だから───泊めて欲しいって言われた時も、勝手に、彼氏と上手くいってないんだろうな。これってチャンス到来かも、とか、下衆い考えが頭の片隅にあった。
……結局、勘違いではあったけど、あまりにもゲスな思考だから、叶絵さんには知られたくない。まぁ、言うつもりもないけど。
❖❖❖❖❖
「叶絵さん、気分悪くないですか? 中年カップルのいちゃつきとか、エグいですよね」
叶絵さんの胸中を思うと、本当に申し訳なかった。
だから、必要以上に両親のことを『サゲて』けなして。先回りして、卑下してしまう。
「そんな、エグいとか、思わないよ? ただ、目のやり場には困るかな?」
オレの言葉に、叶絵さんは大げさに片手を振ってみせた。
ふいに、中学時代の友人たちの会話がよみがえる。
『親が仲良くしてるなんてキモくね?』
『だよな。親の性生活とか、まじ勘弁しろっつーか』
『男と女である前に、親ってこと自覚しろっての』
最初のコメントを投稿しよう!