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進藤もそう思うだろ? と。同意を求められたのだ。
その時は、曖昧に適当にうなずいたけど、その実、オレの中では未だにモヤる出来事だった。
───あの時も、いまも。
オレにとって当たり前の両親の仲の良さは、世間一般では『気持ち悪い』ことなのだ。それが、オレの心をささくれさせる……『痛い』現実だ。
「……やっぱりそうですよね。すみません。
叶絵さん、優しいから……表には出さないだけですよね」
「えっ? どうしたの?」
「オレの両親、あんな感じなので。正直、昔から友人とかによく思われなくて。
……叶絵さんも、本当は」
そこまで言いかけた、瞬間。
「もうっ。そんな訳ないじゃん! 雅貴くんのお父様とお母様なんだから。仲良しなのは、素敵なことでしょ!」
本気の怒り、だった。きゅっと寄せられた眉と、にらむようにこちらを見上げた叶絵さんに、驚く。
「叶絵さん……」
でも同時に、どこかでホッとしている自分もいた。
───ああ、そっか。オレは、叶絵さんにオレの両親を肯定して欲しかったんだなって、その時、初めて気がついた。
『バカップル』とか『エグい』とか。
オレの両親をけなしていいのは、オレだけだから。彼らに無条件で愛されているオレだけの特権だから。
他の人間に、貶められるのは、我慢がならなかった。
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