進藤くんちのウラ事情《Side M》

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オレは、叶絵さんなら……オレの両親を絶対に貶したりしないと、思っていたんだな。 我ながら、小賢しいし、浅ましい。 でも、だからこそ、こうして叶絵さんに両親を紹介できたことが、嬉しい。 叶絵さんの小さな手をつかみ寄せ、そのあたたかな指先に感謝をこめてくちづけた。 「オレ、叶絵さんのそういうところ、大好きです」 「え? いや、え? ど、どこらへんだろう……」 しどろもどろになる叶絵さんは、黒目がちな瞳と合わさって小動物を思わせる。……ケージに入れて閉じ込めておきたいくらい、可愛い。 これも、叶絵さんには言わないでおこう。 ❖❖❖❖❖ 「───じゃ、またね、雅貴くん」 「家着いたら、メッセージください。心配なので」 「ふふ、解った。本当に、今日はありがとうね。あ、ご両親にも、くれぐれもよろしく伝えてね!」 今日、この駐車場に来た時は、叶絵さんのあまりの顔色の悪さに、早まったかなと少し反省もしたけど。 いまの彼女は、すこぶる機嫌がよくて頬も上気して、いっそう可愛らしさが際立っていた。 「叶絵さん」 「ん?」 なかなか見送りきれない自分を振り切るように、オレは身をかがめて運転席の窓枠にひじをつく。 無防備な桜色の頬に唇を押し当て、ちょっと笑った。 「こういう、不届きな輩がいるといけないので、パワーウィンドウはきちんと上げて運転してくださいね」
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