Night ONE

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Night ONE

交通量の多い国道から横に()れた、もうじき桜も咲き始めるだろう並木道。 昼間との寒暖差に夜風が染みて、ぶるっと震えがきて肩をすぼめる。 ……うう、まだ防寒着必要だった。ストール、車の中だよ。 「使いますか」 自転車を止め、デイパックのなかから翠色のマフラーをつかむと、進藤くんがこちらに差し出してくる。 なんでもないことのような自然な気遣い。進藤くんは、いつもこうだ。 私がその度に胸の奥をぎゅっとつかまれて、息が苦しくなって、泣きそうになっているなんて。 きっと彼は、思いもしないだろう。 努めて明るく、阿呆みたいなテンションで喜ぶ。 「ありがとう〜っ! やー、もうさぁ、最悪だよね。家鍵と車のキー、一緒にしちゃってるから、車中泊もできないし」 受け取ったそれをおもむろに首に巻きつけながら、私は自分に起きた不運を嘆く。 そう、私は今日、鍵を無くした。 せめて、車のキーさえあれば暖房つけてなんとか一夜を過ごせたのに。 せめて、無くしたであろう場所、空のコンテナの本部回収が、あと一時間遅かったら。 『ああ、災難でしたね。見つかったら明日の朝便の連絡バッグに入れておくってことで、埼玉工場のほうに言っときますよ』 と。急いで電話したエリアマネージャーには口先だけの同情と事務的な対応をされた。 いや、私が悪いんだけどさ。余計な仕事増やした自覚はあるけどさ。
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