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親元は、県外。給料日前のカツカツな生活。
消費者金融にお金借りて市内のビジネスホテルに一泊……も、考えなくもなかった。
十年来の親友も、ここ数年の感染騒ぎの同調圧力に屈して疎遠になってるし。こんな状況とばかりに連絡をとるのも気が引ける。
──なんて。
そんなの、全部いい訳だ。確かに私は面倒くさがりの行動力ゼロの女だけれど。
本気で本気の対応を考えれば、こんな手段にはでなかったはずだ。
片想い中の年下くんに、恥も外聞もかなぐり捨てて、泊めてくれだなんて言うとか。
誰が聞いてもおかしな話だ。
「コンビニ寄りますか」
「えっ……あ、そうだよね!」
遅い時間となる夕飯はもちろん、下着とか歯ブラシとか、いわゆるお泊まりセットは必須。
……って、お風呂も借りる前提だけど、いや、やっぱり図々しいのかな? いまさらか?
住宅地のなかにある大手コンビニは、そこだけやけにまばゆい光を放っていた。
ホッとするような、それでいて夜分に片想いの彼と訪れるには、浮足立つ気持ちとわずかな後ろめたさがつきまとう。
そそくさと必要なものだけを買って店の外に出て進藤くんを待ってると、
「飲みますか」
ふわっと香る、コーヒーの匂い。ありがとうと、なんの衒いもなく手を伸ばしたけれど。
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