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「あれ? 進藤くんの分は?」
「オレはいいです。手がふさがってるし。熱いうちにどうぞ」
言うなり、自転車を引いて歩きだす。
え。いや、これ……私だけ?
「あ、じゃあ先に飲んで。お金あとで払うし」
背伸びして、進藤くんの口元にカップを近づける。一瞬、彼の動きが止まったような気がしたけれど、そのまま素直に口をつけてくれた。
「……手に持つだけでも温まりますよ」
「だねー。あったかい……」
お言葉に甘えて両手でカップを抱え込み、指先を温める。じんわりとした熱が身体を伝って、反射的に身を震わせたあと、有り難くコーヒーをいただく。
「……えっ?」
「へ?」
初めて聞く、進藤くんの驚いたような声。彼の動揺する様に、逆にこっちがビックリして変な声が出た。
あれ、えーと……。
「飲んじゃダメなヤツだった?」
「いえ……」
気まずそうに否定されたものの、私はバツが悪い。
親切に買ってくれた物として考えてたけど、手を暖めてください用だった?
なんて、明後日の方向に考えたあと、はたと気づく。
──うわ、ソッチか!
自分が好きな相手だから、間接キスとか全然気にしてなかった! 私のバカ! デリカシーゼロ女!
「ご、ごめんね。自分が口つけたあと他の人が口つけたら気持ち悪いよね?」
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