7-2

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「私は大事な話があってやってきたのだが、安住さんがどうしても二人きりになりたいと応接室まで連れて来られたのだよ」 「まあ、安住さんがどうしてもと応接室へ連れ込んだと言われるのですか?」  佐々木さんが怪訝な表情で問い詰める。 「違います!誤解です」  僕はすぐに訂正した。何を言い出すんだこの野郎!胃が更に痛み出す。 「わかっております。わが社の安住は誰にも優しく接しますので言われた相手が勘違いされたりするのです。こちらにお通しするようにお願いしたのは会社側なんですよ。おほほ。」  佐々木さんが怖い。目が笑っていない。彼女は二重で美人の部類に入るのだがこういうところは倉沢に似てる気がする。それに北島への扱いが客としての扱いではない。これってどういう事なんだろうか? 「うむむ。女性の君らには難しい話はわからないだろうからすぐに出て行ってくれないか」 「さようでございますか?しかし今のお言葉は聞き捨てなりませんわね。弁護士ともあろうお方が女性蔑視とはいかがなものでしょう」 「べ、別にそういうわけではない。言葉のあやだ」 「言葉のあや?つまりは本音におもっているところをつい言ってしまったのでは?……とまだまだ言いたいことはございますが、そろそろ時間になりましたので私たちは退散いたします」 「時間?」  女性社員がドアを開けるとそこには倉沢が立っていた。 「倉沢……」 「え? 何故だ。外回りのはずじゃ」 「ほぉ? 北島さん。何故それをご存じなのでしょうか?」 「受付で聞いたのだ。急いでいたのでこちらもアポイントが取れなかったのでね」 「そうでしたか。ではもうお会いできたのですから私も直接話を聞かせていただきましょう」 「そ、そうだな」 「北島さんはわが社のグリーンウォッシュの疑いの証拠を持参されたそうです」 「ははは。面白い事を言われる。是非みせてもらいたいですね」  倉沢の目が鋭く光る。口元は笑っているのに目が笑ってない。これはかなり怒っているぞ。 「笑っていられるのも今のうちですよ」  北島はカバンから数十枚の資料と商品を取り出す。 「ここに載っているようにこの商品は天然素材、またリサイクルで作られますが、つくる過程段階でかな~りのCO2を排出します。環境に大きな負担がかかる商品なのです。こんなのがエコなはずがないでしょう?」 「そのようですね」 「はっ。認めるんですか。公にされたくなかったら……」 「なかったら? どうされるのですか?」 「まずは500万円。それと安住さんを貸出て欲しいですね」 「安住をですか?」 「ええ。上司命令となれば安住さんも断れますまい。いや、ご主人にも言い訳が出来るんじゃないんですかね?」 「北島っ。お前ってやつは……」 「黙れ安住!」  ぐっと歯を食いしばる。倉沢?何を考えてるんだ?
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