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バンド活動
タケは、ひとつ年上のいとこであるカイとバンドを組んでいた。
カイの父親の影響でギターを始めた二人だったが、バンドを組むならベースが必要だといって、タケはベースをやるようになったらしい。
二人は楽曲制作もしており、俺は二人が作る曲が好きだった。
もともとはカイの同級生を中心としたメンバーだったのだが、一人二人とやめていき、メンバーが入れ替わっている。
俺が加入した時、だいぶ年上のドラム担当の野田さんがいた。
野田さんは、口数が少なく謎な人だった。
以前はパンクロックの激しいドラムをしていたらしく、性格とのギャップに驚く。自分のことをあまり話してくれないが、どうやら結婚しているらしい。
野田さんが入ってしばらくしてボーカルの人がやめたらしく、俺が誘われた。
タケとカラオケに行った際、俺が割と歌がうまかったのと、タケが俺の声を気にいってくれたのもあって、ボーカルをやってみないかと言われたのだ。
俺は楽器を演奏したことがない。
カイとタケが曲制作をしている間は何もできないので、ギターの練習をはじめた。
しかし、そんな俺にカイが言う。
「お前はイケメンなんだからギターは弾かなくていい」
ちょっと意味がわからなかったが、笑っていたので冗談かと思った。
すると真面目な顔で、そんなことよりボイトレして音域を増やせと言われた。
それはもっともな話だった。
それと、誰かのライブに行ったことあるのかと聞かれ、ライブDVDは見たことあるけど実際見に行ったことはないと答えたら、ライブパフォーマンスを見て勉強して来いと言われた。お前はボーカルなんだから、喋る機会も多い。盛り上げるのもお前の仕事だ、と。
それもわかる。
だが、ライブやフェスに行く費用は自腹になるわけで。
そんな俺に野田さんが声をかけてくれ、野田さんの伝手でライブを見学にいくこともあった。
野田さんは助っ人ドラムもよくしているらしく、実は顔が広いことを知った。そして、行く先々でみんなから結構慕われていて、なぜ俺たちのバンドに入ったのか謎だった。
いろんなバンドのライブを見た。
有名なアーティストから、そのへんのライブハウスでやってる人たちまで。
勉強になったし、意識が高まったので提案してくれて良かった。
それから俺たちも、小さなライブハウスで時々ライブをするようになった。
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