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しばらくして、またカイに言われた。
「お前はイケメンだから、広報部長に任命する。バンド名を知らしめるべく、別の活動をして来い。ほれ!俺がとっておきの情報を持ってきてやったぞ!」
そう言われタブレット端末を渡される。
そこには、あるホームページが表示されており、オーディション、という文字が書かれてあった。
どうやら、子ども向けのテレビ番組の特撮ヒーローオーディションらしい。
え?俳優?
カイ曰く、相乗効果を狙っているのだとか。
俺がBlue Jackalというバンドのボーカルとして俳優活動をすることにより、バンド名を知らしめていくという作戦らしい。
それも理解できた。
カイはひょうきんでいい加減に見えることもあるが、実はしっかりバンドのことを考えている。ただ、ちょっとワンマンプレーに思えるところもあり、それが原因で今までのメンバーと衝突することが多々あったようだ。
いとこであるタケは、小さい頃からずっと一緒にいるのでカイの性格は熟知している。カイとは性格が真反対で、物腰の柔らかい実直な男だが、意外とウマが合っているので不思議だ。
カイは野田さんに対しては一目置いていて、俺さえ問題なければ、この先もこのメンバーでバンドとして続けていけそうだった。
特撮ドラマ…。
もしやこれは、子どもの頃に夢見たヒーローになれるのでは?
そう思うと少し心が躍った。
が、演技が自分にできるだろうか。
「大丈夫だよ。そういうヒーローものでデビューする俳優さん多いし、アクションがメインなら、諒也空手やってたしできるんじゃない?いいと思う」
タケにも推され、オーディションに応募した。
ダメ元だったが、一次審査を通過し、二次審査の面接までこぎつけた。
その時に何を喋ったかは記憶にないのだが、なんと合格の連絡をもらった。
そして俳優デビューを飾ることになった。
その芸能プロダクションは、新人俳優を何人も育ててきたノウハウがあり、俺もとてもお世話になった。
丁寧に教えてくれるし、意外と楽しくてやりがいがあった。
演技にハマったのも、この時の監督さんのおかげと言える。
雑談の中で、俺がインディーズでバンド活動をしていることを話した時、どういう曲なのかと興味を示され、デモテープを渡した。
すると、レコード会社の方が俺たちのライブを見に来てくれ、そこから、あれよあれよとメジャーデビューが決まった。
誰が何と繋がりがあったのかはよくわからないが、ラッキーだった。
カイの思惑通りだ。
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