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それからも、バンドと俳優業を両立させながら活動していた。
両立はなかなか難しかったが、俳優で表現の奥深さを知り、バンドでも何かできないかと思い、いくつか詩を書き出すようになった。
しかし、カイにダメ出しをくらってばかりだった。
特撮ドラマからしばらくして、空手漫画がアニメ化された。
俺が空手をやっていたという話を聞いたのか、そのつながりで主題歌をやらせてもらえることになった。
ビッグチャンスだった。
このチャンスを逃すまいと、カイとタケも楽曲制作に熱が入った。
ありがたいことに、主題歌として提供した『FIGHTER』という曲が好評だった。
おかげで、Blue Jackalの知名度もあがった。
ようやく俺も、このバンドに貢献できていると思えた。
この波にもう少し乗っかろうと、オリジナルのミュージックビデオを作る話を提案された。
制作を担当してくれることになった映像監督さんから、アニメのイメージを損なわない程度に空手の格闘シーンを取り入れたいと言われ、俺をヒーローに見立て、悪役を倒すストーリーにしようと言われた。
しかしこの監督さんがこだわりの強い人で、アクションシーンに手を抜きたくないらしく、本当の空手試合さながらのアクションを希望された。
何が問題かというと、俺の相手となる悪役を、仮面を被った正体不明の女の子、という設定にしたことだ。
俺に、女の子相手に本気で闘えとでも言うのか?
男と女では力の差があるだろうに無茶な話だと思った。
映画でも撮るのかと言わんばかりの熱量だったのだが、指摘したいことはいろいろあった。
正体不明と言いつつ、相手が女の子なら体格でわかるだろうに、大柄な女の子でも激選するつもりだろうか。
確かに、俺の身長は176cmで、そこまで高い方ではない。
どこまでこだわるつもりなのか、言い出したら聞かない人だった。
案の定、人選でつまづいた。
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