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学生時代
子どもの頃、街中でケンカを見た。
商店街の路地で、か弱そうな男子学生が、いかにも不良の風貌をした男三人に囲まれ、おそらくカツアゲをされていた。
まだ小さかった俺にはどうすることもできず、影からそっと見ていた。
様子のおかしな俺に気づいた通りがかりの男の人に声をかけられた。
俺の目線の先を確認した男は、その四人に近づいて行った。
案の定、不良たちが男に殴りかかった。
目の前で繰り広げられる野蛮な殴り合いに恐怖心を抱いたが、1対3と数では不利なはずの男があっという間に勝利した。
その男が不良らに言った。
「ダセェことやってんじゃねえよ」と。
俺は戻ってきた男に思わず、「カッコイイ!」と言った。
一瞬で不良をやっつけたことに興奮していた。
「さっきの足をクルッてやったやつ、凄かった!」
「まわし蹴りのことか?」
「まわし蹴り?そう!それ!」
その男が俺に言う。
「お前もやりたかったら空手習いな」
「空手?」
「おう。あ、でもな、それは誰かを痛めつけるためじゃない。誰かを守るためだからな」
そう言って去って行った。
ヒーローだ!!
そう思った。
その時に見た鮮やかなまわし蹴りが頭から離れず、空手道場に通いはじめた。
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