学生時代

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空手といっても流派がいくつもある。 その前に、伝統空手と実践空手と大きく二つに分けられる。 伝統空手は形を重視していて、組手の試合ではノンコンタクト、いわゆる寸止めになる。 実践空手はフルコンタクト空手ともいい、実践での攻防を重視している。要するに直接殴り合うやつだ。 俺が通っているのは実践空手で、打撃を受けると相当に痛い。 中学生までは、週に二回ほどその道場に通った。 10年近く通ったおかげで、少年の部で初段、いわゆる黒帯を取得した。 少年部で黒帯であっても、高校生になると一般部になり、段位も最初から受け直しが必要になる。 そのまま続けても良かったのだが、高校では学校の空手部に入部した。 部活での空手は伝統空手なので少しやり方が違うのだが、この時はとにかく家にいたくなかったので、流派を変えてでも毎日活動できる部に入りたかったのだ。 家にいたくない理由は、義理の母と弟妹ができたからだ。 小学校に入学してすぐ、母親が病気で亡くなった。 母はもともと体が弱く、俺を産んでからは入退院を繰り返すようになった。 幼過ぎて何もわからなかった頃は、抱っこをせがんだり、もっと遊びたいと母にすがりついた。 体力有り余る俺のせいで、母がどんどん弱っていった。 ある時父親に言われた。 「ママを困らせるな」 自分が甘えることで母を困らせている。 俺は我慢を覚えた。 俺が大人しくしていれば、母は元気になると思っていたのだ。 しかし、俺の期待を裏切り、母は亡くなった。 たいした我儘も言えず、母親に甘えた記憶もほとんどない。
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