136人が本棚に入れています
本棚に追加
高校三年生の時、部活の成績が優秀だった俺は、空手の強豪大学の推薦入試を受けることになった。
顧問が尽力してくれ、試験を受けさえすれば、合格確定だった。
その入試の日の朝、つい最近まで付き合ってた彼女を駅で見かけた。
俺を見つけるなり彼女が駆け寄ってきた。
どうやら俺を待ち伏せしていたよう。
「リョウくん!話があるの!」
切羽詰まったような顔で言われる。
彼女とは二週間前に別れている。
彼女の方から別れを切り出してきたのに、今更何の話があるというのか。
それに、俺はこれから試験を受けに行かなければならない。
「悪いけど、俺今から入試なんだよ。帰ってきてからでいい?」
そう言って先を急ごうとした。
が、彼女に腕を掴まれ、泣きそうな顔で言われる。
「あっ、赤ちゃんがっ、できたみたいなの!」
アカチャンガデキタ??
…
は?!
赤ちゃんができた?!
すぐには理解できなかった。
彼女の一言でその場を立ち去ることができなくなり、呆然と立ち尽くす。
泣きそうだった彼女は、ついに泣き出してしまった。
泣いている女子高生と、それをただ眺めているだけの男子高生に、好奇の目を向けながら通り過ぎる人々。
ここは駅前だ。人目があり過ぎる。
とりあえず人目につかないところに移動しよう。
彼女を連れて近くの公園に行き、ベンチに座って彼女を落ち着かそうと背中をさする。
そうしながら考えていた。
赤ちゃん?
ホントに??
え、俺の子?
毎回避妊はしてたのに。
あ…。
思い当たる日がある。
別れる一週間前のことだ。
予定外で彼女と会うことになり、家に誘われた。
自然とそういう雰囲気になってしまったが、盛り上がっているさ中にコンドームがないことに気づいた。さすがにゴムなしはまずいと思いやめようとしたが、彼女に「大丈夫だから」と言われ、そのまま続けてしまった。さすがに外に出したが、やはり生の挿入はまずかったのだ。
何が「大丈夫」だよ!
デキちゃってんじゃねーか!
後悔先に立たず。
最初のコメントを投稿しよう!