ラグナロク

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 大会当日。オレは他にエントリーしている人たちを見て愕然とした。魔物たちの他に、人型の悪魔も多数いた。  ──迂闊だった。  人型はいないと思っていた。だって……さ。人型が血を流すところなんて見たくないじゃん?  ──ゴーン……ゴーン……。  そんなことを考えていると、街にベルの音が鳴り響いた。開始の合図だ。フライングしないようにと等間隔に立っていた全ての悪魔が──殺し合いを始めた。怖がり……いやいや、まずは他の人の力を見極めるため、オレはまず近くの店の影に隠れた。  (静かにしないと……)  オレはポスターに書いてあるルールを読んだ。  ルールはいたってシンプル。  殺すだけ。  武器もよし、素手もよし、魔法もよし。解放されないなら封印もよし。戦意を消失させるなら、完全でなくてはならない。逃げ場、フィールドはこの街全体。どんな手を使っても全員倒さなければならない。まさにデスゲームだ。  ルールを読むのはこのくらいにしよう。街の人は皆建物に隠れてしまった。皆、流れ弾に備えている。好戦的なやつもいれば、オレみたいに平和を望む人たちがいるということだけで勇気をもらえた。  今日はオレが本番を出すときに着る、いわゆる『戦闘服』ってヤツを着ている。威嚇用に左右で色の違う翼を全開にして見えるようにし、悪魔らしからぬ白い服を選択する。ズボンは魔力の動きがわかりやすい、珍しい発光するズボン。  久しぶりの真っ当な戦闘だと浮かれているのは否定しようがないが、これで本気を出せるだろう。……なぜ左右で翼の色が違うかって?普段は目立たないように両方同じにしてるんだけど、戦闘のために気を向けたら色まで手が回らないんだ。  それでもまだ剣を抜いてすらないオレがこんな火中にいてもいいのか……?そう思っていた時だった。  ──ゴロン。  下を向いて悩んでいるオレの目の前に、獣型モンスターの焼け焦げた腕が転がってきた! 「ひっ!?」 「ん?」  声を聞きつけたのか、そのモンスターを倒したと思われる魔物がこちらに向かってきた。グレー色だが、リザードマンだ。 「お、こんな所にもいたか。その腕を見て驚いただろう?それにそんな立派な剣を二ふりも持っているのに、もったいないぁ……。そうだ!俺と組もうぜ」  チーム戦もありだ。こんな怖がりなオレを仲間に入れてくれるようなヤツはいないと思っていたので、ポスターに書かれていた説明を読み飛ばしていたのだ。 「…………」  オレはリザードマンを見る。彼はニヤニヤとしたままだ。作戦のためか、勝利に近づくからか、面白がっているのか。彼からはオレへの殺気は感じられないようだ。  これはいいかもしれない。向こうで燃えている魔物がいるようだが、あんなに強そうな魔物を倒したリザードマンと一緒なら大会を乗り越えることができるかもしれない。  オレは「いいよ」と言い、仲間になった。  敵を倒さねば己が死ぬ。ルマイはオレに何をさせたいのか……。生きて会えたら聞きたい。そんな思いを胸に、オレたちは駆け出した。
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