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「はっ、はっ、はっ……!!」
全力疾走をする。戦いに参加している悪魔が減ってきていることに感謝した。無駄な戦闘に引っかかることがないからだ。
こんなにも離れているのに、なぜか火事になった場所がわかる。恐らくさっきルマイと話していたカフェかもしれない。当たっていそうな予感と、外れてほしい願いが合わさって頭がおかしくなりそうだが、自然とその方向に足が動いていた。
「間違っていてくれ……頼む……!!」
向かいたくないという気持ちと、間違っていても誰かが被害に遭っているのなら助けに行かなくちゃという気持ちが、オレの中でグチャグチャに混ざって……前に進んでいるのに、頭が、腰が、気持ちが重い。
そしてついに火事現場に到着した。
「なんだこれは……」
ついさっきまでテラスが破壊されていただけのカフェが────今は、焦土と化していた。
「は、は?なん、で」
オレの膝がガクガクと震えた。
まだ燃えているところと、もう黒焦げになって炎が無くなっているところ。誰かがやったのだろうけど、でも、なんで。
この大会でボロボロになった建物はここだけではない。むしろこのコルマーという街は、何度もこんな姿になってきた。それでも、なぜオレがここまで狼狽えているのかというと、答えはひとつ。『人間』であるルマイがさっきまでここにいたからだ。
「誰か、いないのか!?」
「………………」
「あっ!!」
キョロキョロして生存者を探すと、近くにリザードマンの姿があった。こんな近くにいたのか。とにかく怪我はしていないようでよかった。オレは痛くはないのに軋む体を懸命に動かし、リザードマンの元へと駆け寄った。
「おい!大丈夫か!」
「……レイン」
リザードマンはゆっくりとこちらへ向いた。
ゆっくり。ゆっくりと。
何を溜めているかわからない。いやわかりたくない。
爬虫類の目がギョロリと回り、こちらを捉える。炎の光が、服に隠れた鱗を反射する。
いつもゾッとするが、今は一秒が十分にも思えるような気持ちなので、オレの息がどんどん上がっていった。
「ここを燃やしたのは俺だ」
「?!」
突然の言葉に、思考が止まった。
──リザードマンがこのカフェを燃やしただって?しかもそこで瓦礫の下に倒れているのは……ルマイ……?あぁ、大量出血をしている。ここを燃やした奴が殺したのだろう。その『奴』は、チームメイトのリザードマン……!
オレは腰にかけていた剣に手をかけた。
──『憎め』
「リザードマン……!貴様……!」
──『恨め』
「絶対に……!」
──『殺し合え』
「許さねぇ!!」
頭の中が怒りの感情で満ちた。
この魔物を倒すことしか考えられなくなった。
当然リザードマンの方が力量が上だ。しかしそれでもとオレは、彼に向かって突っ込んでいった……。
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