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…
「少しの間、森を留守にする。」
森へ戻ってきて、俺の元を訪ねて来た王は、俺の顔を見つめながらそう告げた。
俺の後ろでなんだかよくわからない果実をかじっているリフレアスは、「そーかそーか」と適当な相槌を返した。興味がなさそうだ。
ーーーおそらく、聖女召喚がされたのであろう。
そして、召喚された聖女はなにもすぐに戦いに向かうわけではない。
このゲームは、育成要素も含むRPGだ。
召喚された聖女はまず初めに、グロース国の魔法学校へ入学することとなる。
そこで自らの能力、ひいては仲間たちの能力を磨く。
つまるところレベル上げだ。
このゲームは、そもそも、この学園生活がメインになっている。わりと王道な乙女ゲームなのだ。
聖女とともに闇を祓うべく立ち向かう仲間は、すでに決まっていて、
偉大なる4種族からそれぞれ1人ずつ。
ドラゴンからは、猛者・へームル
エルフからは、王・シェーンヴァルト
ドワーフからは、天才・ユヴェーレン
マーメイドからは、奇跡・スケイル
もちろん、全員聖女のパーティーメンバーであり、攻略対象である。
(エルフにとっては少しの間でも、俺にとってはけっこう長い時間なんだよなぁ。)
おそらく数年間はこの王と会うことはないのだろう。
……さらにいえば、もし主人公である聖女が恋のお相手としてこの王を選んだ場合。
エルフの森を捨てることはないにしろ、聖女が亡くなるその時までこの王は人間の聖女の側にいるのだろう。
(…そうなった場合は、もしかしたら2度と会えないかもしれないな)
俺だって、人間なのだから。
…少しの寂しさを覚えつつ、俺は王に別れの言葉を告げることとしよう。
「いってらっしゃい、シェーンヴァルト様」
「?…何を言ってるんだ?
…リヒトも一緒に行くだろう?」
へ???
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