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あのね、本当は私気づいてたの。
どれだけ理由を並べても、私は伊藤晴哉くんを心から消すことはできない。
だって、考えないようにしようと思うこと自体にすでに矛盾が生じている。思い出してはいけないと思えば思うほど意識してしまうから。
私から見た伊藤晴哉くんと結子ちゃんは最高に似合っている。とても素敵だ。だけど、結子ちゃんには伊藤晴哉くんではない彼氏がいるという事実は変わらない。
私はとてつもなく自己肯定感が低い。でも、伊藤晴哉くんのことを特別に気にしてしまっている。
今だって、教科書を返しに来てくれる時にまた会えるな、と思ったら本当はちょっとウキウキしてる。
せっかくだから、現在恋しているこの気持ちは保留にしておこう。心の隅にちょっと寝かしておく感じが理想だ。
クラスは別れてしまったんだから、自動的に毎日顔を合わせてしまうことはない。
そっと想っとくくらいなら誰の迷惑にもならないでしょ?
これから一年間の間にだってきっといろんなことが起こる。
私が他のことに夢中になって、伊藤晴哉くんのことなんてどうでもよくなるかもしれない。
恋愛自体にいつの間にか興味がなくなるかもしれない。
伊藤晴哉くんに恋人ができる可能性だってある。それが結子ちゃんだったらいいな。
私の貧しい想像力ではこれが限界だけど、ずっと今のままなわけがない。何かが少しは変わるはずだ。
お帰り、私の初恋。
今の気持ちが何らかの形に変化するまで、とりあえずよろしくね。
【了】
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