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心から伊藤晴哉くんを消すために、春休みの計画を立てることにした。
真剣に何かをする時間をたくさん作ったらいいかもしれない。現在の生活はダラダラしていて良くない。
まずは体力作り。運動は苦手だし嫌いだから部活も入っていない。
だけど歩くのは好きだから、散歩してみようかな。毎日早歩きで1時間歩いたら効果があるんじゃないだろうか。
せっかく歩くなら春らしくて歩きやすい靴が欲しいな。私の足に唯一入る25.5cmのメンズ物のスニーカーだって、パステルカラーの靴ひもを通したら可愛くなるかもしれないでしょ?
ついでに髪も切ってみようかな。
それから、苦手な教科をわからないところまで戻って勉強してみよう。春休みは短いからなるべく早めに準備を始めよう。
そう思っていたはずのに……。
修了式の日、結子ちゃんが欠席した。熱が出たんだから仕方ない。
私には結子ちゃん以外に特別仲のいい友達はいないけれど、半日くらい一人で過ごすくらい問題ない。
「谷川さーん、おはよー。今日結子休みって、聞いた? 底無しの怪人が熱出すって、何かの前兆かな? なんかヤバイこと起こりそうじゃない?」
一人でも問題ないんだから来ないでよ、って言いたいのに言えない。
爽やかな笑顔でペラペラ話しかけないで。心から消すって決めたんだから。
だいたい最近急にかっこよさが際立ってきたのは一体どういうことなのだ。身長が私より高くなったから? 私の方をよく見てくれるようになったから、正面から顔を見る機会が増えたせい?
なんだかドキドキする。顔が熱い。脳も心臓も勘違いしないで! 私は伊藤晴哉くんに恋なんてしてないんだから。
「お、おはよ。あ……ちょっと用事思い出したから、ごめんね?」
私はどうしていいのかわからなくなって、トイレに逃げ込んだ。
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