そう思っていたはずなのに……

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なんで最後の最後で結子ちゃんは熱を出すのか。 伊藤晴哉くんは今日は特にかっこいいのか。 私は何を悶々としているのか。 個室に入ってぼんやりと考える。 煩悩とか邪念とか、私には無関係だと思っていた言葉が脳にのしかかってくる。実際には何も私の上には乗っていないのに、ずーんと体が重くなりトイレの壁にもたれかかる。 少しの間そのままじっとしていると、トイレに入ってきたであろう数人の話し声が聞こえて来た。 「谷川さんてさー、ハルヤ狙ってんの? 身の程知らずにも限度ってものがあるんじゃないの?」 「あー、あいつボーッとし過ぎて常識なんてなさそうじゃない?」 「まあ、ハルヤはぼっちの子とかほっとけないだけだからさー」 「ぬか喜びってヤツ? でも、鈍いから気づかないんじゃない?」 「あんなヤツとしゃべってると、ハルヤの印象悪くなるからやめて欲しいけどねー」 きゃははー、と楽しそうに笑う声。 伊藤晴哉くんが、ぼっちを放って置けない人だということはわかっています。 私がたまたま結子ちゃんと一緒にいるから。だから、ついでに私にも話しかけてくれるだけってことも理解しています。 身の程はわきまえてます。 常識はあるかないかわからないけど、変な期待はしていない。 私が悪く言われるのはかまわない。だけど伊藤晴哉くんに迷惑がかかってしまうのは嫌だ。 春休みの間に、絶対に気持ちをリセットしよう。2週間も経ったら、みんな私のことなんてそんなに気にならなくなると信じて。 私は完全にあなたを心から消してしまうから、だからみんな安心して……? ね? これで本当にきちんと決心がついた。
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