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◇◇◇
テレビ局にてレギュラー番組の撮影を終えたシンの元に、笑顔も肌もお尻もプリップリ、全身ブランドで固めた若々しい女性がやってきた。控室に戻ろうとするシンの後ろをプリップリ女性が付いて回る。
「シン様!今日もかっこよかったですわ!!」
「どうも」
「今度お食事でもどうですか?いいお店ありますのよ!私たちいずれ婚約……とシン君のお父様もおっしゃっておられますし?距離を深めるのも大事ではなくって?」
「仕事なら義務で行くよ」
「つれなーい!でもそこが素敵ーー!!」
「シン、ちゃんとご挨拶だけはして」
「ハァ」
隣を歩くタケルに諫められて、シンはテレビ局の廊下で立ち止まった。プリップリの小娘を前にしてシンは深呼吸してからきちんと頭を下げて挨拶する。
「いつもスポンサーありがとうございます、ヒダチさん。機会があればぜひ」
「ヒダチさんだなんて!かしこまってくれるのも可愛いですわ!マナミはいつだって婚約者としてシン様のお味方です!ではお仕事がんばってくださいね!」
三大電機メーカーの一つヒダチのご令嬢マナミは、お尻をプリップリさせて去って行った。
◇◇◇
シンは控室に戻ってやっと息ができる。控室のドアをしっかり閉めてから鬱憤を叫んだ。
「はぁーー婚約者気取りウッッッザぁああああーーー!!」
「はいはい、よくやったよ。偉いよシン」
「ちょっと夢に浮かれてるスポンサーご令嬢に頭下げるくらいでいちいちガタガタ言うなウザい」
控室ではタケルがソファに座って、その膝の上に麗香が座っている。いつもの光景、女王様と嬉々として椅子になりたいタケルだ。偉そうに禁煙パイポをふかす麗香の頬にちゅっとタケルがキスをする。
「麗香、シンには優しくしておかないと、前みたいにポキッと折れるよ?」
「でっかいガタイして、メンタル豆腐とか笑える」
「もっと優しく言ってあげて、麗香。心配してるって」
「僕の前でイッチャイッチャしないでよ!僕最近帰ってないんだから家でヤればいいでしょ!あーもーやだーネネに会いたい一緒に寝たいー」
控室でイッチャコラする相方と事務所社長のカップル、女王様とその椅子は目に毒だ。彼らが座るソファとは違うソファにシンもダイブする。うつむせに寝転んだシンは煩悩を垂れ流した。
「忙しい。時間ない。移動長い。お金で時間買いたい」
「そんな無茶なスケジュール組んでないのに、お前が勝手にネネのとこ通って時間すり減らしてんだよ」
「せっかくネネのところ行ってもキスして帰るしかできない。もっと長い時間ネネといーたーいー」
「まあ気持ちはわかるけどね。私も麗香のためにわざとスキャンダルしにいかなきゃいけないときは苦行さ」
タケル椅子の上で、タケルの顔に向かって禁煙パイポの煙をフーと吹きかける麗香にタケルがクスクス笑う。
「事務所社長と本命熱愛なんてスキャンダルはつまらないからな。戦略的ゴシップで私たちだけは撮られないようフルカバーだ」
「私の賢い社長さん、愛してるよ」
黒髪モデル体型の麗香と、妖艶な容姿で老若男女問わず世間を魅了するタケルは見つめ合ってクスクス笑いながらキスを交わす。
シンは学生時代から変わらずお熱い女王様とその椅子を前に口の中で常に砂糖をかまされている。甘いものは好きだが、コイツらの甘い現場は見飽きた。
言い返す気力も失ったシンをタケルが伺う。なんだかんだ言って一番面倒見がいいのが相方だ。
「シン、最近きちんと寝てないだろう?ネネちゃの家は遠いんだから行くのは止めてちゃんと寝な。不眠症ぶり返すよ?」
「嫌。ネネの顔見ないと今日を生きた気がしない」
「前は配信見てるだけで浮かれてたくせに贅沢になったもんだ。果てしなくウザいなー」
「とか言って、麗香もシンに甘いんだから。そういう優しい所、私は好きだよ?」
「可愛いタケルに免じて許してやる。ほらよ、シン」
タケルに腰を撫でられて上機嫌な麗香が、シンに書類を投げ渡した。シンはのっそり起き上がって頭の上に着地した書類を読み始める。
「学園祭の仕事、ブッ込んでやるよ」
学園祭の舞台仕事は積極的に受けるようにしているが、それの何が珍しいのか。シンは書類に書かれた学校名に食いついた。
「この大学!ネネの職場じゃん!!」
「ネネちゃんに芸人姿を見てもらえる大チャーンスだよ」
タケルが指を鳴らしてパチンとシンにウインクする。麗香もパイポを揺らして笑った。
「お前の一番イイ男な所見てもらって、近くに引っ越してきてもらえるくらい惚れさせてみろよ」
ウザいウザいと言いながら応援してくれる社長と、相方の優しさが身に染みて シンは生気を取り戻した。シンが勢いよく立ち上がる。
「ありがとう麗香!ちょっと、タケル!ネネに見せるならやりたいネタある!新しいやつ考えてた!ミーティングしよ!」
急にやる気になって動き始めたシンを見て、相方と社長は顔を見合わせて笑った。
「ネネはシンの餌にめちゃくちゃ使えるな」
「やる気が出るって言ってあげて、麗香」
タケルは麗香に優しくキスしてから、ネタ打ち合わせのために立ち上がった。
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