ドキドキの初対面

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ドキドキの初対面

◇◇◇ 高層マンションからの夜景が美しい寝室で、夜景より美貌がまばゆいシンはベッドに寝転んでスマホを手にしていた。 赤スパチャでしめくくった今日のネネちゃんねるの配信も、シンは存分に満喫した。大好きの分だけスパチャして、しっかりネネに怒られて顔が緩む。 キングサイズのベッドで今日の可愛かったネネを脳内反芻していると、ピコンと珍しいメッセージ音が鳴った。 「ん?メッセ?」 モガミのアカウントにダイレクトメッセージが届いた。シンがメッセージを開くと高い熱量の文面がそこにあった。差出人は、ネネだった。 <おい、モガミ!お前いい加減にしろよ?!一回ツラ貸せや、しばきまわす!> 「うわ!え!ネネから連絡もらっちゃった!!やった!タケル見て!タケルー!!」 自動販売機ほどの高身長なシンは長い足でバタバタと大きな足音を立てて、同居しているタケルの部屋に乗り込んだ。タケルはまだ起きていたが、深夜にまで騒がしい相方をジロリと睨んだ。 「なんだい、こんな時間に、ついにネネちゃに訴えられた?」 「違い違うもっとハッピー!ネネから会おうって連絡来たんだよ!マジで本物アカウントから! 僕から何も送ってないよ!?向こうからだよ向こうから脈あり!ヤッバ、デート誘われた!」 大興奮でタケルのキングサイズベッドで大ジャンプし続けるシンのスマホをタケルは手に取った。じっくりとツラ貸せこの野郎の文脈を読み取ったタケルは、うんと頷いてシンを見据えた。 「いや、行ったら弁護士いるやつだよこれ。シンが貢いだ金で弁護士雇ってるね確実に。金の良い使い道だ」 タケルの冷静な分析に、シンは聞く耳を持たなかった。シンの耳に念仏である。自販機ほどデカいシンがベッドでぴょんぴょんすれば天井に手が届く。 「やったぁー!!デート!デート!告白の大チャンス!ついに僕の彼女になってもらえる!」 「……え、ネトスト荒らし認定の分際で告白成功すると思ってるんだ?」 「何着ていこっかなぁー!!」 「シン、顔だけじゃどうにもならないことが、世の中にはあるんだよ?」 「ネネのテイスト合わせでカジュアル?それとも大人の男路線ー!?」 「私の話を聞かないなら、出てってくれないかなぁ!」 ベッド上ではしゃぎまわるシンに、堪忍袋の緒が切れたタケルは腹部跳び蹴りをお見舞いする。だが、シンはデカい体でひらりと交わして跳び蹴り返しする。 高校時代に空手大会の決勝戦で出会い、その後ずっとライバルと書いて友として決勝を競い合った二人である。お互いに容赦がない。 だが、職業上、顔も売り物なので顔は殴らない蹴らないお約束だ。 「デートぉお!たーのしくなってきたぁ!」 「私は全然楽しくない!」 ネネから殺意のメッセージをもらい、相方からは殺意の蹴りをもらいつつ、シンだけは殺意の真ん中でハッピーダンスだ。
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