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え?もう限界ですか?
ほとんどハラスメントみたいな声が聞こえた。
「まだたったの、652回ですよ?私はもう1000回終わっているのに」
チョロいのー!お前!みたいな声が、隣の鉄棒から聞こえた。
静也は今、それ何て蜘蛛の糸?と言わんばかりの地獄の懸垂をやらされていた。
向こうでは、ライルが無惨にも力尽きている。
「自分が出来もしないことを、生徒にしろという指導者がいるのは知っています。そんな生き物は心底軽蔑します。なので、自ら模範を示したのですが」
嫌でしたか?ドアが開いてなかったので、開けました。みたいに言われた。
うん。凄い嫌。しかも、妊娠してるママさんなのに。
ああ、今も足に縋り付いてる餓鬼の集団が。
大丈夫?ホントに死ぬわよこのままじゃ。
精一杯歯を食いしばって、静也は懸垂をやり切ったのだった。
それでこうなった。
「では、この前のようになって、襲いかかってください」
平然と、汗をタオルで拭った人妻は、そんなことを言った。
「この前の半島の戦いですが、君は風獣を身に秘め、まさに獣神と化して戦っていました。極めて素人臭い戦い方で」
ネチネチ言い出したわねこの人。
「君は、一応CQCめいた動きを身に着けているようですが、私に言わせればただの踊りに等しいです。今後のことを考えて、少し、私が修した空手を授けようと思います。妊娠中であることなど気にせず、襲いかかってください。デナケレバ、モノクルヲハズシマス」
さらっと今、小さい声で恐ろしいこと言った?
それと、CQBとCQC、真琴さんはあえて使い分けていた。
どっちも近接戦闘のことを言うが、CQBは解り易く言うとガンカタ。CQCはサヴァイブ!サヴァイブ!って感じになる。
まあ、ナイフとか素手で殺すってこと?
ところで静也、今すぐ死ね。やなら殺すって言われてるわよあんた。
「解りました。ムク!来い!」
風獣ムクと同化した静也は、人妻に襲いかかり、
まあフルボッコにされた。
ライルと静也が、揃って屋上に放置されていた。
「まあ、こっぴどくやられたわね。あんた」
「紀子。済まないが、携帯を持ってきてくれ。両足がへし折られて歩けなくなっている」
それ、ただの犯罪よね?そう思いながら、携帯を渡した。
「あー、やっぱり、ビパップはいい。テディ・チャールズの「クーリン」を聴いてると、自然に心臓の鼓動が、落ち着いて、動かなくなりそうだ」
だからそれ、死に瀕してんのよ。
ところで、テディ・チャールズのクーリンって、
ベーオハザードフェイブみたいな声でクーリンのことかあああああああああああああああああ!!って奴?知ってる人いるの?
「あー情けえなあ、静也お前。たった2秒じゃねえかよ。せっかくバスティーミルフの生バスティーが揺れてんのを拝めたのによ。もっと食い下がれよ。俺を楽しませろって」
馬鹿馬鹿しくて聞いていられなかった。
さてこの毛唐をどうしてやろうか、と紀子が考えていた時、諫早真琴が、何故かバスケットゴールを持って現れた。
「両足をへし折ったはずですが、もう治っていますね?」
「うわあ。諫早――先生?そのゴールは一体?」
「え?ああこれは、現役の祓魔官達が揃って脱落し、ならば未来有望な祓魔官候補達を鍛えようと思いまして。バスケの授業だったのですが、ジャンプしてボールを入れたらこうなりました。生徒達は医務室にいます」
ダンクかましてバスケットゴールをぶっ壊した人妻がいたらしかった。
「ちょうど入電がありました。祓魔課に行きましょう」
恐ろしい毒蛇妊婦はそう言った。
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