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紀子達が出て行ったあとで、勘解由小路は背伸びをした。
麻痺したはずの、左手の指がピンと伸びていた。
連合反応。神経の迷動による筋肉の誤作動。機能回復とは無縁だった。
「それにしても、面倒な仕事だなあ。脳筋野郎共には縁のない事件だ」
ん?課長のではなく、隣の椅子に腰かけていた。課長が座る椅子には、もう先客がいる。
「彼等を矢面に出して、大丈夫なのか?」
「あああ。生まれた時、百鬼の卦が出た百鬼姫のことか?まあ大丈夫だ。真琴がいるからなあ。あいつが日々受けている呪詛は、こんなものではないし」
身内にいるものな。もっと恐ろしい呪詛士が。
「タンク3枚貼り付けているんだ。あいつが怪我をすることはあるまい。だが」
そう言って、勘解由小路は島原を見た。
「今後、あの手口は増えていくぞ。電子の世界を利用した、呪殺テロって奴だ。どうやって防ごうか?」
「お前が見せた解答で、何とかなるのではないか?」
「まあなあ。まあ転ばぬ先の杖に期待しよう。あいつは、関東近辺を地獄にしかけた霊災を鎮めた奴だし。まあ期待しようか。若い人材って奴を」
ああ、彼か。まあ話は聞いている。
若い人材か。祓魔課のような若い組織には、必要なのだろう。
島原は、何となく納得した。
「ああ、若い人材といえば」
そう言って、携帯に手を伸ばした。
「ああトキ、うちの子達は?あ?莉里が?家出した?まあいいや放っとけ。いずれ俺に会いに来るさ」
携帯を切って、勘解由小路は島原に目を向けた。
「じゃあ、前に開発したあれを持っていこう。俺が出らればな」
出たら死ぬというのに、何故平然としているんだ?こいつは。
島原は釈然としなかった。
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