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腰に手を置き空を見上げながら、やたら瞬きをする者。
古びたメモ帳をパラパラとめくりながら「…なんだっけ?」と呟く者。
隣同士どこが痛い、腕が上がらない、などと身体の不調を共感し合う者。
……そんな個性的なメンツに、フルウはやや不安げな表情を見せた。
「え、えぇ…まぁ、頼りにしてますよ。シルバー部隊を…」
『皆、隠れ蓑は持っているな? それを付けて、ヤツが姿を現すまで待機だ。新しい餌も忘れるな』
隊長に言われた通り、檻の置かれた場所に餌をばら撒き、フルウ達は木の葉を網に絡ませた隠れ蓑を纏って木の陰に待機した。
『目撃情報によると個体の大きさは様々だ。小さいものならその場で即、殺せ。デカい個体は一度、麻酔銃を打って眠らせろ。起きる前に始末するんだ。いいな?』
隊長の静かな声にフルウは緊張が増した。口の中が乾くような感覚があり、水でも飲んで気持ちを落ち着かせたい気分だった。
しばらくして、遠くから羽音が聞こえてきた。
その空を切る音の大きさに巨大な体が想像される。
フルウ達は身に纏った木の葉の隙間から、上空を確認した。
「き、来ました…!」
大きな影がフルウ達の頭上を通り過ぎ、餌をばら撒いた住処へと、その個体は降り立った。
大きな青みがかった羽根をゆっくりと閉じ、撒かれた肉や木の実を咥え、頭を揺らしながら食べている。
「こ、これは……!」
『来たか、コヤンイバード…!』
初めて見る害獣「コヤンイバード」の姿に、フルウは全身が震えた。体だけではない、心の中がざわつくような妙な感覚に陥っていた。
『フルウ、ヤツの状態はどうだ? 麻酔銃が必要か?』
隊長が声を掛けるも、フルウは言葉を失ったように返事をしなかった。
通信が切れたのかと何度もフルウの名前を呼ぶ声に、ようやく声を発した。
「……隊長、ダメです。僕にはできません」
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