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震えるフルウ・エル
『どうした、怖気づいたか? 大丈夫だ、お前ならできる。今まで厳しい訓練に耐えてきただろ』
落ち着かせるように隊長は話した。だが、フルウは声を上ずらせながら、この台詞を返した。
「無理です! だって…すごく可愛いんですもん!」
『……は?』
フルウの拳がわなわなと震える。
先ほど感じた心のざわめきは、コヤンイバードの可愛さに感動をしていたからだった。
『フルウ…お前、今何て言った?』
「すごく可愛いと言いました! 隊長は見たことあります!? 猫のような顔立ち、胸元のふわふわな毛にスティックパンのような手! そして顔を埋めたくなるようなフサフサの尻尾…きれいな碧色の羽……か、完璧過ぎる!」
フルウは興奮し、早口でまくし立てた。
『お、おい…大丈夫か? 落ち着け、しっかりしろ。目の前にいるのは害獣で、俺達はその駆除を任されているんだぞ?』
部下のおかしなテンションに、普段は冷静な隊長も戸惑いを隠せない。
「駆除…? こんな天使を駆除!? 信じられない、僕にはできませんよ! 隊長も見てください、今…画像を送りますから」
そう言うとフルウは、左手の通信機の上蓋を開け、コヤンイバードへと向けた。
ピピピピッという電子音が小さく鳴り響く。
「隊長、送りましたよ。見てますか!?」
『大量の連写を送るな! それにしても…思っていたよりデカいな。成獣なのは確かだ』
「大きくて可愛いんですよ~。目もクリクリしてて……あぁ!?」
小声ではあるが、フルウは急に驚きの声を発した。
『どうした!?』
「…隊長、大変です! コヤンイバードの赤ちゃんが出てきました!」
フルウ達の目の前に、どこからか現れた小さなコヤンイバードが3体、よちよちと親コヤンイバードの足元へと歩いていく。
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