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どうなるコヤンイバード
「はぁ…隊長…」
『落ち着いたようだな。しっかり麻酔が効いてから…首を落とせ』
「…隊長、聞いてください。さっき僕が言いかけた事。このコヤンイバードは言われていた害獣とは違うようです」
『何? どういう事だ?』
フルウの近くにシルバー隊員が集まって来たようで、何人かが口々に話し出す。
隊長は聞こえてくる彼らの話を、顔をしかめながら聞いていた。
「聞こえましたか? つまり、害獣とされているコヤンイバードと、今目の前にいるコヤンイバードは別物らしいです。羽色に違いがあるらしくて、その2種の外見はとてもよく似ていて、素人では判断が付きにくい…そう皆が言っています」
『違う個体…だとしても、そいつが害獣じゃないと言えるのか? 見た目が違うだけで、餌の為に人里を襲ったり、人間の子どもを攫う獣である事は一緒なんじゃないのか?』
フルウはちらりと、後方で麻酔が効き寝ている親コヤンイバードを見た。
子ども達は「ママ起きて」と言わんばかりに、親の体をペロペロと舐めている。
隊長の問いに、またもシルバー部隊がガヤガヤと話しをすると、まるで通訳のようにフルウが彼らの話をまとめて報告した。
「まだ…この個体については正直、詳細は分かってないようです。少ない情報ではありますが…害獣との縄張り争いの末、追いやられたこの種のコヤンイバード達は、主に川沿いに生息するようで…人肉ではなく魚や木の実が主食だそうです。この羽根色のコヤンイバードはあまり発見されないと言われています」
『うむ……。ここは…ひとまず上に報告する。国の判断で希少種として保護する話が出る可能性もある…』
「では、このコヤンイバード達は…」
『殺さず……撤退だ。麻酔が切れる前にその場を離れろ』
「分かりました…あ…! 起きた…かも?」
寝ていた親コヤンイバードが、その大きな体をもどかしそうに揺らしながら「グウウウ…」と喉が震えるような声を出した。
命中した麻酔薬だけでは、効果の時間は短かったようだ。
『暴れるかもしれん、離れていろ!』
隊長の指示のもと、フルウ達はコヤンイバードから距離を取り、様子をうかがった。
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