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「お前はこの神国日本、そして男に生まれてきたという時点で大分優位に立っているんだ。ならそれを十二分に生かせ。それでこそ日本男子というものだ」
男はそう言い終わると、身を翻し、梨畑の奥に姿を消していった。あとに残された良太郎には、蝉の音だけがやたらと響き渡る。
――俺はあのとき以上に美味い梨をいまだ食べたことがない。
ことあるごとに、あの晩夏を思い起こす。そして、考える。
あの背徳的にまで甘い果汁を啜ったとき、俺のなかになにが産まれ落ちたのかを。
男は、つよい。
おとなはつよい。
おとなの男は、いちばんつよい。
おとなでも女は、よわい。
男でも子どもは、よわい。
――では――?
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