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(これは……まさか、オレか?)
尾上は驚いて、その原稿を凝視する。
そう、その青年は、学生時代の尾上を思わせるような面影を宿していたのだ。
華奢で色白で、まるで可愛い女の子のようだと周りには言われていたが。
しかし尾上としては『可愛い』ではなく、クールで格好いい男と言われたくて、意識してツンと振る舞っていたから、他人からすると、きっとこんな感じに見えていただろう。
自分でも思うが、ガキのくせに気取っていて嫌なヤツだと、そう周囲に認識されていたに違いないと追懐する。
その、尾上によく似た漫画の中の青年『匡平』であるが。
彼はナオトという主人公らしきイケメンに好意を持っているらしく、実にウザい絡み方をしていた。
◇
『だから、特別にお前の話を聞いてやると言ってるんだ。僕の親戚が新人モデルを探している件についてだが、本心では口を利いてほしいと思ってるんだろう?』
『うるさい。ウォーキング・レッスンの途中なんだから、邪魔すんじゃねーよ』
『いくらナオトが国内で人気だからって、ただの日本人が、ジパンシーの専属モデルに起用されると本気で思っているのか?』
嫌味な言い回しに、ナオトというらしい主人公は顔を強張らせる。
そんなナオトに、青年は皮肉たっぷりなセリフを重ねた。
『絶対無理だな。モデルの対象が東洋圏といっても、選ばれるのはハーフかエキゾチックな大陸系のモデルさ。ナオトみたいな日本人が、オーディションに参加するだけ無駄だよ。だったら黙って、僕の――』
『やってもいないのに、そんな事を言うやつはクズだ』
ナオトの冷たい言葉に、一瞬ビクッと身を引くものの、プライドの高さからか匡平は『ふんっ』と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
『ああ、嫌だいやだ。現実を見ない輩というのは実に憐れだな』
『レッスンの邪魔だ。出て行け』
『……じゃあ、今後二度とクズの僕には話しかけるなよ』
そのセリフに反応し、ナオトは怪訝な表情になる。
『おい、ちょっと待てよ――』
だが、匡平はもう振り返ることなくレッスン室を出て行った。
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