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 ナオトはそれを、止めることなくただ溜め息をついて見送ってしまう。  また明日も会えると、そう疑いもなく信じて。    ◇ 「な? 平良先生の漫画はファッション業界を設定した内容だって、これで分かっただろう? この主人公がナオトっていう日本人で、オーディションの結果見事ジパンシーの専属モデルに抜擢されるんだ。他のライバルたちも続々登場して、ファッション業界を巻き込んでいく訳だが――」  甲斐のセリフに、尾上はハッと現実に引き戻された。  そうだった、今は会社だった! 「……そうですね。ジパンシーだのショネルだの言っていた理由が、これで分かりましよ」  改めてハイブランドを頭の中で整理する尾上に、甲斐は大きく頷く。 「だろー? そしてこの生意気な脇役が、平良先生の希望ではO,Nのブランドを身に付けているという事にしたいらしい。お前が帰った後も先生とサシで話し合ったんだが、どうしてもそこは拘りたいようなんだな」 「そこを説得するのが、甲斐さん(担当編集)の仕事でしょう」 「そうなんだが、何故か譲ってくれなくてよ」  甲斐も困ったように嘆息すると「とにかく」と続ける。 「ブランドO,Nに関しては、次回以降の特集で改めて組むという事で、この際、一度やり過ごすのが良いとオレは思うんだな。平良先生だって、紙面の都合上と説明すればさすがに納得するだろう。この生意気キャラ、どうせ脇役な訳だし」 『どうせ脇役』というセリフに、尾上は表情を変えずに訊き返す。 「主人公のナオトと、この脇役(匡平)は、この後どういう展開になるんですか」 「ああ……とりあえずネームが三本分上がっているが、どうも平良先生はくっ付けたいようだな。しかしアンケートの結果が芳しくないから、オレは変更を提案しているよ」 「『(かんば)しくない』?」 「そ。ツンケンキャラの匡平(きょうへい)より、ナオトの後輩モデルで天使系男子の万里生(まりお)がアンケート上位だから、当然カップリングはナオト×万里生の声が大多数だ」
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