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 だから尾上も、甲斐の意見に同意を返した。 「甲斐さんの言う通り、アンケート上位に入る為には、読者に不人気のに照準を合わせている場合じゃないですね。人気キャラクターの万里生とナオトの仲を進展させた方が、確実に票が集まるでしょう。可愛くて素直な青年と、凛々しい主人公のカップリングは鉄板でしょうから」 「やっぱ、お前もそう思うか」 「はい。漫画の編集は素人のオレでも、結果は明白ですよ。この嫌味な脇役(匡平)の事は忘れて、先に話を進めるべきですね。ファッション特集の件も、ジパンシーとショネル、ヘルメスの許可は出ているんでしょう? だったら、華やかなハイブランドで統一して紙面を飾った方が見栄えもいい。平良先生はO,Nに拘っているようですが、マイナーブランドなんて誰も知らないわけですし紙面に乗せる意味もないです。その方向で話を進めましょう」  惨めな自分を思い起こさせるキャラクターをこれ以上視界に入れるのは、気分の良いものではない。  そして甲斐の方も、編集者として確実にアンケート票を取りに行ける方向へ持っていくのが仕事だ。  双方の利害は一致し、『シザービラ』は次号で、ナオト×万里生のカップリングを決定的にするアクションを起こすべきだという事で、意見が纏まった。  しかも次号では、『シザービラ』のキャラクターが身に付けるハイブランドの特集も載るのだから、アンケート一位は盤石だ。 「よぉし! 今度こそ中河に吠え面をかかせてやる!」  いきり立つ甲斐は拳を握ると、やる気に満ちた表情で尾上を見遣った。 「これから平良先生にネームを変えてもらうよう強く説得するから、こっちは任せてくれ」 「はい。オレは、ファッション部に居た頃の伝手も使って煌びやかなハイブランドの特集記事を書いてやりますよ」  やっとタッグらしくなった二人であったが、基本的な問題がある事にはまだ気付いていない。  漫画を描くのは甲斐でも尾上でもなく、平良だということに――。
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