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「右近先生、左文字先生! いつまでも仲違いしている場合じゃないんですよ! 次号では平良先生の『シザービラ』が優勢になるだろうって分析も出ているんです! ここで濃厚な濡れ場を投入して、票を獲得しないとっ!」  と、力説する中河の声に頷いたのは左文字悠斗だけだった。  作画を担当する悠斗は長く漫画を描いていることもあり、そこら辺の事情もよく知っている。  アンケートで結果が振るわない漫画は打ち切りコースまっしぐらだし、いつまでもだけでは、ファンだって他所に目移りしてしまうだろう。  なので、悠斗は中河の意見に同調しながら、右近涼真に向き直った。 「な、編集(こいつ)もそう言ってるんだ。いい加減に、テツヤとマサルの仲を進展させようぜ。ここまでキスだけで繋いでいるんだ、そろそろ次の段階に移るべきだって」 「それが、君の言う『仲直りセックス』というワケか」  涼真はフンと鼻を鳴らすと、不愉快そうに眉間に皺を寄せた。 「そんなお手軽な関係じゃないだろう、は」 「いや、原作担当のお前の言う事も分かるが……せっかくここまで首位をキープしているんだから、盤石なものにしたいんだよ、こっちは」 「何を言う。アンケートなど別に首位じゃなくても構わないだろう、くだらん事を言うな」  確かに、下位ではないのだから打ち切りの心配をするのはまだ杞憂(きゆう)ではあるが。  しかし、せっかく首位を独走していた身としては、ここで順位を落とすことには抵抗がある。  漫画家として、そこは譲りたくない。  だから悠斗は、涼真に詰め寄った。 「お前の意見はそうかもしれないが、訊ねたいのはの気持ちだ」 (マサル)とは、二人が合作している『彼らの東京物語』の登場人物だ。 そのキャラクターの名前を出し、悠斗は続ける。 「テツヤを、このままいつまでも孤独にしていていいのか? マサルは、都会人で孤独なテツヤを愛してるんじゃなかったのか?」
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