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「『仲直り』?」 「そう、そうだ! 本当はキスしてほしいんだろ? 素直に言えよ」  前号の回では、自分からは中々積極的になれない事に、マサルが悶々と悩んでいたシーンで終わっていた。  そして煽り文(あおりぶん)では『次号、マサルは自分の気持ちを口に出せるか⁉』で〆ている。  ちなみに煽り文とは、漫画雑誌の最後ページの余白に書かれている一言コメントの事だ。  これは作者自身が考えた煽り文を使う場合もあるが、主に編集部(漫画家の担当)が考える事が多い。  この煽り文。  単行本では消されてしまうのが普通であるが、そのまま消さずに単行本に使われることもあるほど、意外に影響力がある代物だった。  悠斗はその煽り文を持ち出して、涼真に迫る。 「今こそ、自分の気持ちに素直になるべきじゃないのか? キスしてくれって、勇気を出して言うチャンスだろう?」 「で、でも、僕はそんな……」 「上京してやりたかった事は、バイトに明け暮れる事じゃ無かったハズだろう? マサルはテツヤのドラムに惚れ込んだ、そこから本気で好きになったんだって告白してだな、この先の展開――」 「! もう知らねぇ!」  涼真は癇癪を起こしたようにガタっと乱暴に立ち上がって、編集室から脱兎のように走り去って行っていた。 「あ――! おい、マサル! じゃなくて、涼真!!」  追うかどうか迷う悠斗に、中河が仏のような眼差しになって頷く。 「行って御上げなさい」 「っそー! お前も後で覚えてろよ!」  悠斗は悪態をつきながら、慌てて涼真の後を追っていった。  その背中を見遣りながら、岸は溜め息をつく。 「……とりあえず、次号ではラブシーンを入れてほしいのが編集としての本音だが。あの様子では、難しそうだな……」
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