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 そんな甲斐に、岸は心配しているような声音で訊ねる。 「どうだ、来月号。上手く行きそうか?」 「……はい、必ずそうなるよう努力します」 「ファッション部から来た尾上とも、上手く行っているか? どうも向こうの方は、平良先生の専属のような担当は断りたいようだが……」  平良とは反りが合いそうもないと、ハッキリ言っていた尾上だ。  では担当を組ませた甲斐とはどうなんだろうと、BL編集部漫画部班長としては気になるところだ。 「あいつ、岸班長にもそんな事を言ってたんですか!?」 「……と、言う事は、事実な訳だな」 「どうも、平良先生とは意見が合わないようなのは本当ですね。先日八王子まで伺った時も、あいつ、一人でさっさと帰っちまったんですよ」 「そうか……」 「ああ、でも、ファッション特集に関してはやる気を出してますよ。得意分野だからでしょうね」  BL専門誌『Quartz』では、今後広告収入が見込めるファッション記事も連載しようという話になっている。  知識の明るい尾上は、きっと戦力になるだろう。 (ただ、平良先生がやたらとO,Nっていうデザイナーに固執するもんだから、尾上も頭に来たんだろうな)  甲斐は、平良ことと尾上の過去の因縁を知らないので、尾上が平良の担当を嫌っているのは、この世にいないデザイナーにいつまでも平良が拘っているのが原因だろうと答えを出していた。 (オレだって、いい加減にしてくれと言いたいぜ。キャラクターのファッションなんて下らないモンより、肝心の漫画の方を優先してくれって怒鳴りたいくらいだ)  憤懣やるかたない甲斐の様子に、中河がいらない一言を口にする。 「甲斐さんには、オシャレ星人の気持ちは分からないでしょうね~」 「なにぃ!?」 「多分だけど、オノはデザイナーを挫折したクチじゃないかなぁ。あのジャンルって漫画家よりも狭き門だから、成功者になるのは本当の一握りだろうし。オノも、口に出さないだけで色々あると思うよ」
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