君の声が透明になった。

4/9
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「…………頑張ろう、一緒に」  どうしようもできない事情を抱えている彼女に対して、頑張ろうって言葉は失礼かもしれない。  けど、君が頑張りたいと言ってくれるのなら。  季節と戦う覚悟を持っているなら、これからの人生も君を支えていきたいと思った。 「ちゃんと……弱音、吐いて」  君が頑張ることに疲れたときも、絶対に君を支えよう。  抗えないに運命を生きる彼女に対して、絶対って言葉は使ってはいけないかもしれない。  けど、定められた運命をどうにかできるんじゃないかって。  俺がマンガの主人公になってみせるって……そんな風に意気込んでみたかった。 『…………くん』  ううん。  主人公になりたい。  こっちの表現の方が合っているのかもしれない。 『……くん』  名前を呼ばれる。 「あ……」  手に、余計な力が入る。  せっかく海に来たのなら、冬だろうとなんだろうと楽しめばいい。  体の力を抜いて、自由気ままに冬の海を堪能すればいい。  そう思うのに、体は思う通りに動いてくれない。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!