雪の日にもっと冷たい機械の中へ

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    「雪に関連する伝説や逸話として、かつては雪女や雪男といった空想の怪物が……」  私が回想を切り上げて、意識を教室に戻すと、まだ雪についての話が続いていた。  雪女や雪男だなんて、少し雑談気味にも聞こえるけれど、これが本来の授業内容なのだろう。  教師といっても、しょせん人間ではなくアンドロイド。プログラム通りに授業を行うだけなのだから。  なんだか少し馬鹿らしくなって、教室の窓に視線を向ける。  外に広がっているのは、いかにも暑そうな青空だ。既に一週間以上、かんかん照りが続いていた。 「もう十二月なのにね……」  嘆息のような独り言が、私の口から漏れる。  温暖化現象が加速した結果、二十九世紀の地球では、全く雪が降らなくなっていた。  バーチャル・リアリティや記録映像でなく、本物の雪を見たことがある人間は、世界で私一人だけらしい。 (「雪の日にもっと冷たい機械の中へ」完)    
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