雪の降る街で

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いやー極楽でございますですねー。  平日に雪が積もって、みんながあくせくブルブルしてる中、暖房が効いた部屋でアイスコーヒーと「雪見だいふく」を食べる……これほどの贅沢はありませんですよ。  気分はプチ貴族といったところでしょうか。  といいますのも、私がニート&子ども部屋おじさんなのでなしうる遊びなのですよ。  私クラスの五十歳童貞・ハゲ・デブともなれば、もう世間の冷たい目には何らうしろめたさを感じることなく現状を受け入れておりますからして、「最強寒波到来」と天気予報で騒がれても身じろぎひとついたしませんよ、はい。  私は一〇四キロの超肥満体ではありますが、まったく暑がりではなく、普通に寒さ暑さに弱いです。  とはいえ、思い返してみますと平地に暮らしている私には、雪に関する思い出はひとつしかありません。  そう、中学・高校のスキー修学旅行でございますですね。  地元の貧乏公立中学・高校(中退)に通っておりました私は当然のごとく、クラスカーストの最底辺でございましたから、修学旅行に何の思い入れもなかったのですが、当時のトレンドとしまして「修学旅行をスキー合宿」というバカげたものがあったんですね。  狭いこれまた地元の乗り合いバスで何時間もかけて信州の雪ン中のスキー場まで連れていかれて、猛烈な寒さの中、東京から来てたバイト大学生にスキー指導を受けるという、軍隊のシゴキみたいな修学旅行でした……。  思えば当時「私をスキーに連れてって」とかバブル期のクソ恋愛映画のせいで「スキーブーム」みたいなのがあったんですね。  二度もスキー修学旅行に強制連行された私は、スキーができるようになりましたですね。  とはいえ、三十年以上前の出来事ですから……今はスキーができるかどうかなんて知ったこっちゃありませんけどね。  ただ修学旅行中にバレンタインデーを挟んでいたことで、私はスキー指導員のヤンキー女子大生から「義理チョコ」ってマジック書きされたラッピングのチョコをもらいました。  それが、生涯唯一女子からもらったチョコレートございますよ。  同じクラスの友人の男は「誕生日がバレンタインの前の日」ってことだけで、なんか女子から「誕生日プレゼント兼バレンタインチョコ」をバンバンもらっており、ただならぬ殺意を抱いたのを覚えておりますよ。  とにかくスキー合宿はスポーツであって遊びではないので、私たちはガンガンしごかれ、ホテルの部屋に帰って「ウッドペッカー」等の古い海外アニメを観ることだけが楽しみでしたね……。  聞くところによりますと、最近の修学旅行は沖縄だの東京ディズニーランドだの、楽しい観光ばかりだそうじゃないですか!  くぅーっ、生まれた時をつくづく間違えてしまいましたですよ!  私の観光は、スキー修学旅行の帰りに長野の善光寺に立ち寄るだけですからね!  しかも夜中の真っ暗の善光寺に。  「行く年来る年」じゃないんですよ!  「牛に引かれて善光寺参り」ってのがご当地では有名ですから、中学・高校と牛の一刀彫りを一つずつ記念に買って帰りました。  今でも玄関に飾ってありますけども、もう三十年以上前の一刀彫りになるんですね……。  当時びっくりしたのは、スキー場だけでなく、日本全国が大雪に見舞われていたってことです。  帰りのバスで、いつまでも雪景色が続くなあ……って思っていたら、どこもかしこも雪が積もってたっていうね。  結局早朝に帰宅できるはずが、深夜の帰宅になってしまいましたですよ。  翌日は学校が休みだったので、当時ハマっていたビートルズの「ホワイトアルバム」を翌日雪が積もった道を買いに出かけたのを覚えてますですね。  本当に、雪、雪、雪、白、白、白、で覆われた思い出です。  でも、思い出はキレイなとこしか残っていませんからして、雪で立ち往生したバスから山ン中でおしっこしに行った思い出や、女子生徒が早く帰りたい、って泣き出して困ったことは忘れがちなんですよ。  やっぱり、雪は思い出の中だけに閉じ込めといて、暖かい部屋でアイスコーヒーと「雪見だいふく」を楽しむのが最高だな!って話でした。                   終
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