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「だから俺は料亭を継がずに、フランス料理人になったんだ。フランス料理でも、俺のオリジナルが出せる創作フランス料理を作る為に…」
「碧……一度、ご両親と会って話してみたら?」
「えっ…」
「今、碧は自分の店を持っていて、お父様と立場は同じでしょ。碧は碧の考えがあって、お父様はお父様の考えがあるのかも知れない。きちんと話してみなくちゃお互い何も分かり合えないよ」
恋の言葉に筑間はジッと考え、恋を真っ直ぐに見つめて言った。
「そうだよな。俺の気持ちも親父の考えている事も、このままじゃ分からないままだ。恋…」
「ん…?」
「一緒に行ってくれるか?」
「うんっ!」
恋は満面の笑みで答え、筑間は礼を言う。
「恋、ありがとう」
2人で後片づけをした後、ソファーで寛ぐ。肘掛けを背もたれにして、筑間がソファーの座面に乗り両脚を伸ばす。恋は筑間の上に乗って寝そべり、抱き締められていた。
「桐原さんと垣内さんは、実家の料亭の事、知ってるの?」
「うん、知ってる。店にも食べに来た事があるし、皐は親父達とも話した事があるし」
「そうなんだ…」
「何かごめんな。恋にだけ話してなかったみたいになって」
「ううん! 気にしてないよ。でも……今日話してくれてありがと」
「恋……俺こそ、ありがとな」
嬉しそうな笑顔で筑間が恋にキスをしようとした時、恋は突然声を上げた。
「あっ!」
「何!」
「垣内さん、桐原さんとどうなったかな? すごく仲良かったでしょ?」
「あぁ……まぁな。あれだけ言ったから、垣内もこのままじゃダメだって事は分かってると思うけど……」
「あの優しい桐原さんと大喧嘩したって心配だね…」
恋がそういうと、筑間はニヤリと笑って言った。
「2人とも自業自得なんだよ」
「えっ……2人とも?」
「そっ! 垣内から聞いた話で、全部分かった。垣内は強がって嘘をつくから、皐に好きって言えなくなった」
「うん…」
「皐は……たぶん、垣内を試した」
「試した?」
「うん。俺には言ってないけど、皐は垣内の事が好きなはずだ。俺の事を好きだろって訊いたのは、垣内が何と答えるか試したんだと思う。だけど答えを聞いて、垣内にすきって言えなくなった……ふふっ、何やってんだか…」
「そうだったんだ。お互いに想い合ってるのに……」
「なぁ、自業自得だろ? でもまぁ、きっと皐から動くだろうな」
「えっ、でも、垣内さんには桐原さんからは動かないって…」
「あぁでも言わなきゃアイツ、素直にならねぇと思って……皐は優しいから、きっと自分から連絡して謝ってると思う」
「そっか……上手くいくといいね…」
「そうだな。垣内はともかく、皐には幸せになって欲しい…」
「ふふっ、それじゃ垣内さんが可哀そうでしょ」
「いいんだよ。垣内の嘘のせいで、恋も傷つけてただろ?」
「そうだけど……でも自分の気持ちも分かったし、勇気を出せたのは垣内さんのおかげでもあるから…」
ニヤッと筑間が笑い、恋の唇にキスをして言う。
「もう一回言って「碧に触らないで。碧は私の彼なの」って」
「うっ……もう言わないっ」
「えぇぇ……言えよ。恋…」
「言・わ・な・い…」
恋の口を塞ぐようにキスをして、両手で恋の両頬を包み真剣な目で言う。
「言えよ。俺の事、欲しがれ」
「碧は私のもの。誰にもあげない…」
「上出来…」
筑間のキスが激しく恋の口内を犯し、2人の舌は深く絡みつく。筑間が恋を抱きかかえ、ソファーから寝室のベッドへ運び、そのまま恋は『二回目』を体験する事になった。
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