恋の季節

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「いい?」 小波が答えているにも関わらず、赤尾はまたも恋に尋ねる。恋がコクンと頷いて答えると、赤尾は微笑んで自分のデスクに戻って行った。 「赤尾先輩……カッコいいよね…」 小波は顔を赤く染めて、赤尾を見つめながら呟くように言う。 「えっ」 恋が小さく声を上げ小波に視線を向けると、小波は恋に視線を向け微笑んで言った。 「私、赤尾先輩の事、好きなんだぁ。でもまだ内緒。少しずつ距離を詰めないとね」 「そうなんだ」 小波が自分の気持ちを話してくれた事が嬉しくて、恋は笑顔で答える。 「だからさ、恋も協力してくれる?」 「協力?」 「そう。ランチに行く時、赤尾先輩も誘おうよ。連れて行ってって言ってたし」 「そうだね。いいよ」 「ふふっ、ありがとう。合コンは恋の為にセッティングするからさぁ」 「分かった」 そして早速、翌日の昼休憩に恋と小波は赤尾をランチに誘った。3人でオフィスを出て『ビストロ キッチン』に向かう。広い歩道を並んで歩く。右の車道側に赤尾、真ん中に小波、左側に恋。 「雑誌やテレビで話題になってる店って言ってたよな」 歩きながら赤尾が、小波と恋に向かって話す。 「そうです! だからすぐにテーブルが埋まっちゃって」 小波がそう答え、続けて言う。 「ちょっと急ぎましょ!」 恋の腕を掴んで走り出す小波。恋がチラリと小波の方を見ると、反対の手は赤尾の腕を掴んでいた。 (華……ふふっ、積極的だなぁ……すごいや…) 恋にも積極的に声をかけて来た小波。気さくで優しくて、恋の事を知ろうとしてくれる気持ちが嬉しかった。友達になってくれた小波が頑張っている姿に、恋も未知の(こい)を頑張ってみようと思うのだった。 店に着くと小波がドアを開けて中を見回す。 「あっ、テーブル席が空いてる!」 そう言って振り返り、赤尾と恋に微笑む。 「何名様ですか?」 男性スタッフが出て来て尋ね、小波が答えた。 「3名です」 「では、こちらへどうぞ」 男性はそう言ってテーブル席へ案内する。そのあとを小波、赤尾、恋がついて行く。 「こちらでどうぞ」 男性はそう言って、一旦テーブルから離れ、カウンターに向かった。テーブルに着き小波が椅子に座ると、その向かい側に赤尾が座った。恋は小波の隣に座る。3人が座ったところで、男性スタッフが丸いトレーにグラスを乗せ戻って来た。3人の前に水の入ったグラスとおてふきを置き、注文を訊く。 3人はメニューを開くが、小波の勧めでコーヒー付きのランチセットを注文した。ランチセットの内容は日替わりで変わるらしく、前日とは違う料理になっていた。価格もリーズナブルで量も味も申し分なく、ランチには丁度いい。 男性スタッフが一礼してテーブルから離れると、赤尾が店内を見回して話し始めた。 「へぇ、結構広いんだな。カウンターがあってその奥が厨房か」 「そうみたいですね」 小波が答える。 「てか、女性客ばっかだな。そりゃあ、あのスタッフならそうなるか…」 ニヤリと笑って赤尾はそう言った。
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