白い記憶

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第4章 「かずくんが、かずくんが」 「どうしたの? 何があったの?」  息子が血相を変えてリビングに飛び込んで来たかと思うとソファに座っていた私の膝に抱きついて同じ言葉を繰り返した。 「かずくんがどうしたっていうの?」 「かずくんがいなくなった」 「え?」  私は息子の言葉に驚いて取るものも取り敢えず息子の案内する場所に向かった。本来だったら警察に連絡をするとか、せめてかずくんのお母さんに声を掛けなくてはいけなかったところですが息子の状態に我を忘れてしまい、それらのことを全て頭から消してしまいました。 「ここって」  すると息子に急かされて着いた場所は子供達に近づかないように言いつけていたところでした。それで息子を見ると申し訳なさそうな顔をして私を見たのです。 「この先に行ったのね?」 「うん」  そこは両側がブロック塀で囲まれた狭い通路がずっと奥まで続いていてその先には金網で先に勧めないようになっている笹薮があるところでした。 「金網を乗り越えたの?」 「ううん」 「じゃあどこでかずくんがいなくなったの?」 「振り返ったらいなくなってたんだ」 「え?」 「かずくんと金網のところまで行ってそれで戻って来る途中で降り返ったらかずくんがいなくなってた」 「じゃあかずくんは一人で金網の先に行ったんじゃないの?」 「ううん。そんなことはないよ。確かに僕の後ろからついて来てたから」  私は仕方なく息子を連れだってその奥へ行ってみることにしました。辺りは暗くなって来ました。それで懐中電灯を持って来れば良かったと思いました。  通路の入口から金網までは30メートルくらいでした。そこからはがっしりした高さ5メートルくらいの金網が行く手を阻んでいたので、その先へ行くことは出来ません。網の目につま先を入れて昇ろうとしても、その目は細かかったので、そこにつま先を入れることは子供でも無理でした。  私は辺りに入口がないかと見回しました。しかしそこには扉のようなものは見つからなかったのでその先に行くことを断念しました。 「ここから先には行けないわね」 「うん」 「じゃあかずくんは?」 「わかんない」 「どの辺りでかずくんがいなくなったの?」 「この笹の奥でがさっという音がしたの。それで僕達が驚いて逃げたんだよ」 「出口の方へ?」 「うん。それでもうここまで来れば安心だと思って振り返ったらかずくんはいなかった」 「だって他に行くところはないでしょう?」  両側のブロック塀の高さは3メートルくらいあった。しかも足場となるようなものが一切なかったので、そこに上ることは不可能だった。 「でも消えたんだ」
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