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そして、思い出す
スマホのアラームが鳴る前に何となく目が覚める。隣にあるはずの温もりを布団の中で腕をもぞもぞ動かし探すが、なく。体をゆっくり起こし、きょろきょろすると窓辺に立つ彼を見つける。私は布団からゆっくり出て、足音をさせない様に彼に近づいて、後ろから彼を抱き締める。そして、「おはよう」と声を掛ける。彼は前を向いたまま、後ろに腕を回し、前を向いたまま私を抱き締める。
「おはよう。近づいて来てるの、窓に映ってるし、最初からバレてる…驚かへんし、残念やったな」
そして、更に話を続ける彼。
「ほら、窓の外見てみ?雪、五センチ程積もってんで」
私は、彼の腕を軽くトントンとする。すると、ゆっくりほどかれる腕。そのまま彼の背中越しに窓を覗き込むと、そこに広がるのは、雪景色。
「あっ、ほんまやね…」
そして、私はふと思い出す…あの時の出来事を。
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