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「中間発表会を始めます。まず五十嵐さんから」
名前を呼ばれ、パソコンを持って移動する。
結局、会社に泊まってプレゼン資料を作り上げた。
体はボロボロだったが、顔だけはメイクで鮮やかに彩った。
目の前には真顔の前園先輩が座っている。
鋭い眼差しから思わず目を逸らし、会議室の壁を見つめながら口を開いた。
「私が提案する商品は、自分を強く、美しく彩る高級感のあるコスメです。ターゲットは十代後半から二十代前半。持っているだけで、周りと差をつけられ、自慢したくなるようなデザインにしました」
私は、アイシャドウ、マスカラ、チーク、リップを順々にモニターに表示する。
ラメを沢山使いつつ、凛とした強さを出すために全体的にモノトーンの色を基調とした。
「特に発色にこだわり、一度塗っただけでメイクが完成するようにしました」
何度も色を混ぜ、浮きすぎず目立つ色を研究した。
皆が自分を主張できる、消えない色を作りたかった。
一通り発表を終え、前園先輩のコメントを待つ。
待っている時間が永遠に感じられ、全身からジワジワと汗が染みだした。
「つまらないわ」
静寂を突き破った声は、ひどく冷たく、淡々としていた。
「美しく着飾るだけがメイクじゃないのよ。貴方が考えたコスメは重苦しい鎧みたいだわ。そんな息苦しい商品を誰が買うの?」
何か反論をしたかったが、返す言葉がなかった。
ここで泣いたら、塗り固めていたメイクが落ちてボロボロの弱い自分が露わになる。
必死に涙をこらえ、全身を震わせながら床の埃を見つめた。
自分が自分であることが、どうしようもなく情けなかった。
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